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楽古文
伊勢物語 東下り 問題  
      昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに  (第九段)


文章全体を三つに分けて問題を作成しています。

 昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、東の方に住むべき国求めにとて行きけり。もとより友とする人、
ひとりふたりして行きけり。道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。三河の国八橋といふところに至りぬ。そこを八橋といひけるは、水行く河の
蜘蛛手なれば、橋を八つ渡せるによりてなむ、八橋といひける。その沢のほとりの木の陰に下りゐて、乾飯食ひけり。
その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、「かきつばたといふ五文字を句の上に据ゑて、旅の心をよめ。」と
言ひければ、よめる。
  唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
とよめりければ、みな人、乾飯の上に涙落として、ほとびにけり。

                                              


問題の答は、反転させると見やすくなります。

1 この作品の主人公と想定されている人物はだれか。
   在原業平


2 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)八橋         やつはし
 2)乾飯         かれいい
 3)据ゑ         すえ  


3 「かきつばた」といふ五文字を句の上に据ゑて」とは、具体的にどのようにすることか。
   「かきつばた」の五文字を、歌の各句の初めに一字ずつ置いて詠むこと。

4 下線部の動詞の活用の種類と活用形を書きなさい。 

 1)京にはあらじ、           ラ行変格活用・未然形
 2)東の方に住むべき国求めにとて    マ行四段活用・終止形 (助動詞「べし」は終止形につく)
 3)知れる人もなくて、        ラ行四段活用・已然形 (「る」は存続の助動詞「り」の連体形。四段の已然形につく)
 4)その沢のほとりの木の陰に下りゐて、  ワ行上一段活用・連用形 (「て」は接続助詞、連用形につく)
 5)五文字を句の上に据ゑて、     ワ行下二段・連用形 (ワ行下二段活用の動詞は、「植う」「飢う」「据う」の三語)  

5 「唐衣…」の歌の修辞について説明した、次の文中の空欄に入る適切な語を答えなさい。
  「唐衣」は「き(着る)」の( @ )、「唐衣きつつ」は「なれ」を導く( A )である。
  「なれ」は、「なれ親しむ」の「なれ」と、「着なれる」の「なれ」との( B )になっている。
  また、「つま」「はるばる」「きぬる」もそれぞれ( B )になっており、これらの語は「なれ」とともに「唐衣」の( C )である。
  この歌は、各句の頭に「かきつはた」の五文字を順に詠みこんでいる。このような歌を( D )という。

    
@ 枕詞      A 序詞      B 掛詞      C 縁語      D 折句 

6 「唐衣…」の歌の掛詞について、それぞれ何と何を掛けているのか。漢字で答えなさい。
  
なれ  馴れ・褻れ              つま  妻・褄
  
はる(はるばる)= 遥々・張る            来・着

7 「唐衣」の歌には、どのような心情が詠まれているか。
    都を遠く離れた旅の寂しさと、都に残してきた妻への思慕の思い。

8 下線部の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。(重複あり)

 1)ひとりふたりて行きけり。               (  )
 2)唐衣きつつなれにつましあれ             ( 
 )
 3)唐衣きつつなれにしつまあれば            (  )
 4)はるばるきぬる旅をぞ思ふ              ( 
 )
 5)乾飯の上に涙落とて、               (  )
 
  ア サ行変格活用動詞の連用形      イ 強意の副助詞      ウ 動詞の一部      エ 格助詞の一部
  オ 過去の助動詞の連体形      カ 形容詞の一部

9 下線部の助動詞の文法的意味と活用形を答えなさい。
 1)京にはあら、東の方に住むべき国求めに         打消意志・連用形
 2)京にはあらじ、東の方に住むべき国求めに         適当(または可能)・連体形
 3)道知れ人もなくて、惑ひ行きけり。           存続・連体形
 4)水行く河の蜘蛛手なれば、              断定・已然形
 5)橋を八つ渡せるによりてなむ、八橋といひける         過去・連体形
 6)かきつばたいとおもしろく咲きたり            存続・終止形
 7)…と言ひければ、よめ               完了・連体形
 8)はるばるきぬる旅をしぞ思ふ              完了・連体形
 9)…とよめければ、
                  完了・連用形

 10)乾飯の上に涙落として、ほとびけり。          完了・連用形

10 下線部を現代語訳しなさい。
 1)その男、身をえうなきものに思ひなして            自分自身を役に立たないものと思いこんで
 2)ひとりふたりして行きけり。道知れる人もなくて、惑ひ行きけり    道を知っている人もいなくて、迷いながら行った
 3)その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。               うつくしく 趣深く
 4)みな人、乾飯の上に涙落として、ほとびにけり            水分を含んでふやけてしまった



 行き行きて、駿河の国に至りぬ。宇津の山に至りて、わが入らむとする道は、いと暗う細きに、蔦・楓は茂り、もの心細く、すずろなるめを
見ることと思ふに、修行者会ひたり。「かかる道は、いかでかいまする。」と言ふを見れば、見し人なりけり。京に、その人の御もとにとて、
文書きてつく。
  駿河なる宇津の山べのうつつにも夢にも人にあはぬなりけり
 富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白う降れり。
  時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ
その山は、ここにたとえば、比叡の山を二十ばかり重ね上げたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。

                                            


問題の答は、反転させると見やすくなります。

1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)駿河の国       するがのくに
 2)修行者        すぎょうざ
 3)五月         さつき
 4)比叡         ひえ  

             
2 「駿河なる…」の歌について、問に答えなさい。

 1)この歌に用いられた序詞について、空欄を埋めて答えなさい。
   ( @ )は( A )を導く序詞。
      

   @ 駿河なる宇津の山べの     A うつつ

 2)「うつつ」を漢字ではどう書くか。
    

 3)歌の中の「人」は、どんな身分の人と考えられるか。また、それがわかる表現を本文中から10字以内で抜き出しなさい。
    
高い身分の人と考えられる ・ その人の御もとにとて (「御」と尊敬を表す接頭語がついている)

3 「時知らぬ…」の歌について、問に答えなさい。 
 1)何句切れの歌か。                 
   
二句切れ

 2)主語と述語の関係にある文節を書きぬきなさい。           
   山は富士の嶺 ・ 雪の降るらむ
 3)なぜ「時知らぬ」といったのか。         
   
五月の末の暑いころに、富士山には雪が積もっていたから。

 
                

4 「その山はここにたとへば」の「ここ」とはどこか。
    都 (この物語の作者は、都にいて、都にいる読み手にむかって説明している。)

5 下線部の助動詞の文法的意味と活用形を答えなさい。
 1)わが入らとする道は、         意志・終止形
 2)人なりけり。            過去・連体形
 3)駿河なる宇津の山べのうつつにも     断定(存在)・連体形
 4)夢にも人にあはなりけり         打消・連体形
 5)夢にも人にあはぬなりけり         詠嘆・終止形

 6)雪いと白う降れ           存続・終止形
 7)いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ    現在推量・連体形
 8)二十ばかり重ね上げたらほどして、     婉曲・連体形 

6 下線部を現代語訳しなさい。
 1)もの心細く、すずろなるめを見ることと思ふに、       思いがけないひどい目にあうこと
 2)かかる道は、いかでかいまする            どうしていらっしゃるのか
 3)五月のつごもりに、雪いと白う降れり。             月末のころ
 


 なほ行き行きて、武蔵の国と下つ総の国との中に、いと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。その河のほとりに群れゐて、
思ひやれば、限りなく遠くも来にけるかなとわび合へるに、渡し守、「はや舟に乗れ。日も暮れぬ。」と言ふに、乗りて渡らむとするに、
みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さる折しも、白き鳥の嘴と脚と赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ、魚を食ふ。
京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡し守に問ひければ、「これなむ都鳥。」と言ふを聞きて、
  名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。
                                             


問題の答は、反転させると見やすくなります。

1 伊勢物語の文学上のジャンルを答えなさい。
   歌物語


2 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)武蔵の国       むさしのくに
 2)          はし
 3)          しぎ


3 「名にし負はば…」の歌について問に答えなさい。

 1)「名にし負はば」とは具体的にどういう意味か。
    
「都」という語を名に持っているのならば)
 2)歌の中の@「いざこと問はむ都鳥」と、文中のA「これなむ都鳥」と、それぞれの「都鳥」の文の成分としての違いを書きなさい。
  
@ 独立語 (呼びかけの言葉として用いられている)  A
 
述語 (「これが都鳥である」という意味)

 3)この歌はどのような心情を詠んだものか。            
   
都鳥の名を聞いて、都への思いがかきたてられ、都に残してきた恋しい人は無事に暮らしているだろうかと思いやる心情。   

4 「これなむ都鳥」の「なむ」は強意の係助詞で、結び(「なる」)が省略された形である。渡し守のどんな気持ちが表れているか。 
   これが都鳥だよ、都から来たのに、都鳥の名を知らないのか、という気持ち。 

5 下線部の助動詞の文法的意味と活用形を答えなさい。
 1)限りなく遠くも来にけるかなとわび合へに、         存続・連体形
 2)はや舟に乗れ。日も暮れ              完了・終止形
 3)京に思ふ人なきしもあらず。              断定・連用形
 4)鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ、           断定・連体形
 5)京には見え鳥なれば、                打消・連体形
 6)名にし負はばいざこと問は               意志・終止形

 7)舟こぞりて泣きけり。                 完了・連用形

6 下線部を現代語訳しなさい。
 1)限りなく遠くも来にけるかなとわび合へるに、        互いに嘆きあっている
 2)みな人ものわびしくて                なんとなく寂しくて
 3)京に思ふ人なきにしもあらず                  いないわけでもない
 4)わが思ふ人はありやなしや                   (無事に暮らして)いるかどうか



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