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楽古文
十訓抄(1) 顕宗といふ笛吹き 問題
        堀河院の御時、勘解由次官顕宗とて、


 堀河院の御時、勘解由次官顕宗とて、いみじき笛吹きありけり。ゆゆしき心おくれの人にてぞありける。院、笛聞こしめさむとて、召したりければ、帝の御前と思ふに、臆して、わななきて、え吹かざりけり。
 本意なしとて、相知る女房に仰せられて、「わたくしに、局のほとりに呼びて、吹かせよ。」と仰せられければ、月の夜、かたらひ契りて、吹かせけり。女房の聞くと思ふに、はばかる方なく、思うさまに吹きける、世にたぐひなく、めでたかりけり。
 帝、感に堪へさせたまはず。日ごろも上手とは聞こしめしつれど、かばかりはおぼしめさず。「いとこそめでたけれ。」と仰せられたるに、「さは、帝の聞こしめしつるよ。」とたちまちに臆して、さわぎけるほどに、縁より落ちにけり。さて、「安楽塩」といふ異名をばつきにけり。
                                         


問題の答は、反転させると見やすくなります。

1 この作品の名を現代仮名遣いのひらがなで答えなさい。また、文学的ジャンルを答えなさい。
   じっきんしょう ・ 説話集


2 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)勘解由       かげゆ
 2)本意なし       ほいなし
 3)局         つぼね  


3 下線部の語句の文中での意味を書きなさい。 

 1)いみじき笛吹きありけり。             すぐれた笛吹き
 2)ゆゆしき心おくれの人にてぞありける。        なみはずれて気おくれする人
 3)臆して、わななきて、え吹かざりけり        吹くことができなかった
 4)はばかる方なく、思うさまに吹きける、        遠慮する
 5)世にたぐひなく、めでたかりけり          世の中にくらべるものもなく、すばらしかった  

4 次の下線部をそれぞれ文法的に説明しなさい。 
 1)ゆゆしき心おくれの人にてぞありける        過去の助動詞「けり」の連体形(「ぞ」の結び)
 2)院、笛聞こしめさむとて、召したりければ、      
過去の助動詞「けり」の已然形(「ば」をともなって、確定条件を表す)
 3)世にたぐひなく、めでたかりけり          過去の助動詞「けり」の終止形
 4)いとこそめでたけれ       ク活用形容詞「めでたし」の已然形「めでたけれ」の活用語尾(「めでたけれ」は「こそ」の結び)

5 下線部の助動詞の文法的意味と活用形を答えなさい。
 1)ゆゆしき心おくれの人てぞありける。            断定・連用形
 2)院、笛聞こしめさとて、召したりければ、          意志・終止形
 3)臆して、わななきて、え吹かざりけり。            打消・連用形
 4)相知る女房に仰せられて、               尊敬・連用形
 5)局のほとりに呼びて、吹かせよ              使役・命令形
 6)帝、感に堪へさせたまはず。               尊敬・連用形
 7)さは、帝の聞こしめしつるよ。               完了・連体形
 8)さわぎけるほどに、縁より落ちけり。            完了・連用形

6 次の下線部の動作の主体は誰か。後から選んで記号で答えなさい。(重複あり) 
 1)院、笛聞こしめさむとて、召したりければ            (  )
 2)臆して、わななきて、え吹かざりけり              ( 
 )
 3)本意なしとて、相知る女房に仰せられて            (  )
 4)月の夜、かたらひ契りて、吹かせけり             (  )
 5)はばかる方なく、思うさまに吹きける              ( 
 )
 6)日ごろも上手とは聞こしめしつれど、かばかりはおぼしめさず     (  ) 
 7)さわぎけるほどに、縁より落ちにけり              (  )

  ア 顕宗       イ 院(帝)       ウ 相知る女房

7 帝が女房にいって、女房の私室のそばで顕宗に笛を吹かせるようにしたのはなぜか。
   顕宗のすばらしい笛の音を聞くことができないのが残念で、女房に聞かせるのならば、気おくれせずに笛を吹けると思い、
   自分は身を隠して顕宗の笛の音を聞こうと思ったから。

8 帝が「いとこそめでたけれ。」とおっしゃったのを聞いて、顕宗はどうしたか。
  
  思う通りに笛を吹いていたのに、帝が聞いていらっしゃるとわかったとたんに気おくれして動揺して、縁から落ちてしまった。

9 顕宗に「安楽塩」というあだ名がついたのはなぜか。
  
  楽曲の名の「安楽塩」が、顕宗が「縁より落ち」た「落縁」と音が通じるから。

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