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楽古文
枕草子 関白殿、黒戸より 問題
      関白殿、黒戸よりいでさせたまふとて、


 関白殿、黒戸よりいでさせたまふとて、女房のひまなくさぶらふを、「あないみじのおもとたちや。翁をいかに笑ひたまふらむ。」とて、
分けいでさせたまへば、戸に近き人々、いろいろの袖口して、御簾引き上げたるに、権大納言の御沓取りてはかせ奉りたまふ。いと
ものものしく、清げに、装しげに、下襲の裾長く引き、所せくてさぶらひたまふ。あなめでた、大納言ばかりに沓取らせ奉りたまふよ、と見ゆ。
山の井の大納言、その御次々のさならぬ人々、黒きものを引き散らしたるやうに、藤壺の塀のもとより、登花殿の前まで居並みたるに、
細やかにいみじうなまめかしう、御佩刀などひき繕はせたまひて、休らはせたまふに、宮の大夫殿は、戸の前に立たせたまへれば、
ゐさせたまふまじきなめりと思ふほどに、少し歩みいでさせたまへば、ふとゐさせたまへりしこそ、なほいかばかりの昔の御行ひのほどにかと
見奉りしに、いみじかりしか。
 中納言の君の、忌日とてくすしがり行ひたまひしを、「たまへ、その数珠しばし。行ひして、めでたき身にならむ。」と借るとて、集まりて
笑へど、なほいとこそめでたけれ。御前に聞こしめして、「仏になりたらむこそは、これよりはまさらめ。」とて、うち笑ませたまへるを、また
めでたくなりてぞ見奉る。大夫殿のゐさせたまへるを、かへすがへす聞こゆれば、例の思ひ人と笑はせたまひし、まいて、こののちの
御ありさまを見奉らせたまはましかば、ことわりとおぼしめされなまし。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)下襲の裾         したがさねのしり

 2)御佩刀          みはかし
 3)忌日           きにち

2 文中の下線部「御前」とは誰をさすか。
   中宮定子

3 下線部の係助詞の結びの語について説明しなさい。
 1)集まりて笑へど、なほいとこそめでたけれ。       結びの語は「めでたけれ」。ク活用形容詞「めでたし」の已然形
 2)仏になりたらむこそは、これよりはまさらめ。       結びの語は「め」。推量の助動詞「む」の已然形


4 下線部の動作の主体(主語)は誰か。記号で答えなさい。(重複あり)
 1)いとものものしく、清げに、装しげに、下襲の裾長く引き、所せくてさぶらひたまふ。         (  )
 2)細やかにいみじうなまめかしう、御佩刀などひき繕はせたまひて、休らはせたまふに、        (  )
 3)ゐさせたまふまじきなめりと思ふほどに、少し歩みいでさせたまへば、ふとゐさせたまへりしこそ、     (  )
 4)御前に聞こしめして、「仏になりたらむこそは、これよりはまさらめ。」とて、             (  )

 5)大夫殿のゐさせたまへるを、かへすがへす聞こゆれば、                   (  )
 6)かへすがへす聞こゆれば、例の思ひ人と笑はせたまひし。                  (  )

  ア 作者(清少納言)    イ 女房たち    ウ 中宮定子    エ 関白殿(藤原道隆)    オ 権大納言(藤原伊周)
  カ 山の井の大納言(藤原道頼)    キ 宮の大夫殿(藤原道長)    ク 中納言の君

5 下線部を文法的に説明しなさい。
 1)権大納言の御沓取りてはか奉りたまふ。              使役の助動詞「す」の連用形
 2)「仏になりたらむこそは、これよりはまさらめ。」とて、うち笑またまへるを、   尊敬の助動詞「す」の連用形
 3)宮の大夫殿は、戸の前に立たせたまへば、             存続の助動詞「り」の已然形
 4)こののちの御ありさまを見奉らせたまはましかば、ことわりとおぼしめさなまし。  尊敬の助動詞「る」の連用形
 5)ゐさせたまふまじきめりと思ふほどに、           断定の助動詞「なり」の連体形「なる」の撥音便の「ん」無表記

6 下線部の敬語表現について敬語の種類と、誰から誰への敬意を表しているかを答えなさい。
 1)「あないみじのおもとたちや。翁をいかに笑ひたまふらむ。」とて、    たまふ=尊敬・関白殿から女房たちへ
 2)少し歩みいでさせたまへば、ふとゐさせたまへりしこそ、        させ=尊敬・作者から宮の大夫殿(藤原道長)へ
                                         たまへ=尊敬・作者から宮の大夫殿へ
 3)なほいかばかりの昔の御行ひのほどにかと見奉りしに、       奉り=謙譲・作者から関白殿へ
 4)まいて、こののちの御ありさまを見奉りたまはましかば、        奉り=謙譲・作者から宮の大夫殿(道長)へ
                              たまは=尊敬・作者から中宮へ

7 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)女房のひまなくさぶらふを、               すきまなく
 2)いとものものしく、清げに、装しげに、           すっきりと美しいようすで
 3)細やかにいみじうなまめかしう、             優美で
 4)御佩刀などひき繕はせたまひて、休らはせたまふに、     たたずんでいらっしゃると
 5)ふとゐさせたまへりしこそ、               さっと。すっと
 6)例の思ひ人と笑はせたまひし、             思いをよせる人。ごひいきの人

8 下線部を現代語訳しなさい。
 1)「あないみじのおもとたちや。翁をいかに笑ひたまふらむ。」      老人(私)をどんなにお笑いになるのだろう
 2)下襲の裾長く引き、所せくてさぶらひたまふ。           りっぱなようすでお仕えしていらっしゃる
 3)戸の前に立たせたまへれば、ゐさせたまふまじきなめりと思ふほどに、  ひざまずきなさることはないだろう
 4)「たまへ、その数珠しばし。行ひして、めでたき身にならむ。」     仏道のおつとめをして、りっぱな身分になりたい


9 「こののちの御ありさまを見奉らせたまはましかば、ことわりとおぼしめされなまし。」について
 1)「…ましかば…まし」の形を、文法的になんというか。
    反実仮想
 2)誰が誰の「御ありさま」を見申し上げなさったならば、といっているのか。
   ( 中宮定子   )が( 大夫殿(道長) )の
 3)「ことわりとおぼしめされなまし」を現代語訳しなさい。
    もっともなこととお思いになっただろうに

10 文章の内容と合致すると思われるものを三つ選んで、記号で答えなさい。
  ア 関白殿は権大納言の沓を取ってはかせてさしあげた。    
  イ 権大納言ほどの方が沓をはかせなさるのは関白殿がりっぱな方であるからだ。  
  ウ 山の井の大納言は御佩刀などをととのえてたたずんでいらっしゃった。 
  エ 宮の大夫殿が関白殿に対してひざまずきなさったのは、関白殿が前世で善い行いをなさったことによる。  
  オ 宮の大夫殿は昔の仏道修行により、関白殿の前で適切なふるまいをすることができた。 
  カ 中納言の君は、命日に医者のもとへ行った。  
  キ 中宮は宮の大夫殿の後の繁栄を実際には見ていない。   
                                            (  ・  ・  )

   ア・権大納言が関白殿に沓をはかせてさしあげた。   ウ・たたずんでいらっしゃったのは関白殿。 
   オ・「昔の御行ひ」は関白殿に対して言っている。   カ・「くすしがり」は「医者のもとへ」ではなく「神妙なようすで」の意。



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