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楽古文
大鏡 道隆の酒好き(一) 問題
      この大臣は、これ、東三条の大臣の御一男なり。


 この大臣は、これ、東三条の大臣の御一男なり。御母は、女院の御同じ腹なり。関白になり、栄えさせたまひて、
六年ばかりやおはしけむ、大疫癘の年こそ失せたまひけれ。されど、その御病にてはあらで、御酒の乱れさせたまひにしなり。
 男は、上戸、一つの興のことにすれど、過ぎぬるはいと不便なる折はべりや。祭りのかへさ御覧ずとて、小一条の大将・閑院の大将と
一つ御車にて、紫野に出でさせたまひぬ。烏のついゐたる形を瓶に作らせたまひて、興あるものにおぼして、ともすれば御酒入れて召す。
今日もそれにて参らする。もてはやさせたまふほどに、やうやう過ぎさせたまひてのちは、御車の後・前の簾みな上げて、
三所ながら御髻放ちておはしましけるは、いとこそ見苦しかりけれ。おほかた、この大将殿たちの参りたまへる、世の常にて出でたまふをば、
いと本意なくくちをしきことにおぼしめしたりけり。ものもおぼえず、御装束も引き乱りて、車さし寄せつつ、人にかかれて乗りたまふをぞ、
いと興あることにせさせたまひける。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)女院           にょういん

 2)不便なる          ふびんなる
 3)烏            からす
 4)後            しり
 5)本意なく          ほいなく

2 文中冒頭の「この大臣」とは、藤原道隆のことであるが、「東三条の大臣」とは誰のことか。
   藤原兼家

3 「御母は、女院の御同じ腹なり」とはどういうことか。空欄を埋めて説明しなさい。
  女院(藤原詮子)と( 母が同じ )ということ。

4 文中下線部の「三所」がさしているものを答えなさい。
   藤原道隆・小一条の大将(藤原済時)・閑院の大将(藤原朝光)

5 下線部の助動詞の文法的意味として適切なものを記号で答え、その活用形を答えなさい。(重複あり)
 1)六年ばかりやおはしけむ                 (  ・ 連体形 )
 2)大疫癘の年こそ失せたまひけれ。             (  ・ 已然形 )
 3)御酒の乱れさせたまひにしなり。              (  ・ 終止形 )
 4)紫野に出でさせたまひ。                (  ・ 終止形 )
 5)この大将たちの参りたまへ、世の常にて出でたまふをば、    (  ・ 連体形 )
 6)ひとにかかて乗りたまふをぞ、              (  ・ 連用形 )

  ア 断定    イ 完了    ウ 打消    エ 現在推量  オ 過去推量
  カ 伝聞    キ 過去    ク 尊敬    ケ 受身    コ 可能


6 下線部の「せ」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。
 1)紫野に出でさたまひぬ。                (  )
 2)烏のついゐたる形を瓶に作らたまひて           (  )
 3)もてはやさたまふほどに、やうやう過ぎさせたまひてのちは    (  )
 4)いと興あることにさせたまひける。              (  )

  ア サ変動詞の未然形    イ 使役の助動詞の未然形    ウ 使役の助動詞の連用形    エ 使役の助動詞の未然形の一部
  オ 尊敬の助動詞の未然形    カ 尊敬の助動詞の連用形    ク 尊敬の助動詞の連用形の一部    ケ サ変動詞の連用形

7 下線部の語を文法的に説明しなさい。
 1)関白になり、栄えさせたまひて、       ラ行四段活用動詞「なる」の連用形
 2)過ぎぬるはいと不便なる折はべりや。     ナリ活用形容動詞「不便なり」の連体形
 3)いとこそ見苦しかりけれ。          ク活用形容詞「見苦し」の連用形


8 下線部の敬語表現について、敬語の種類と誰に対する敬意を表しているかを答えなさい。
 1)その御病にてはあらで、御酒の乱れさせたまひにしなり。
    させ  = 尊敬      誰に= 藤原道隆
    たまひ = 尊敬      誰に= 藤原道隆
 2)ともすれば御酒入れて召す。今日もそれにて参らする
    召す  = 尊敬      誰に= 藤原道隆
    参らする= 謙譲      誰に= 藤原道隆
 3)おほかた、この大将たちの参りたまへる、世の常にて出でたまふをば、
    参り  = 謙譲      誰に= 藤原道隆
    たまへ = 尊敬      誰に= 大将たち(藤原済時・藤原朝光)

9 下線部の動作の主体(主語)は誰か、選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)六年ばかりやおはしけむ、大疫癘の年こそ失せたまひけれ。         (  )
 2)祭りのかへさ御覧ずとて、小一条の大将・閑院の大将と一つ御車にて、    (  )
 3)三所ながら御髻放ちておはしましけるは、いとこそ見苦しかりけれ。       (  )
 4)おほかた、この大将たちの参りたまへる、                 (  )
 5)世の常にて出でたまふをば、                     (  )
 6)いと本意なくくちをしきことにおぼしめしたりけり。               (  )
 7)車さし寄せつつ、人にかかれて乗りたまふをぞ、              (  )
 8)いと興あることにせさせたまひける。                   (  )

  ア 東三条の大臣    イ 女院(藤原詮子)    ウ 藤原道隆    エ 藤原済時・藤原朝光
  オ 道隆・済時・朝光

10 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)過ぎぬるはいと不便なる折はべりや。            不都合な
 2)今日もそれにて参らする                差し上げる
 3)やうやう過ぎさせたまひて後は、              だんだん
 4)おほかた、この大将たちの参りたまへる、           だいたい
 5)車さし寄せつつ、人にかかれて乗りたまふをぞ、        かつがれて

11 下線部を現代語訳しなさい。
 1)栄えさせたまひて、六年ばかりやおはしけむ、      六年ほどいらっしゃったのだろうか
 2)されど、その御病にてはあらで            そのご病気によってではなくて
 3)この大将たちの参りたまへる、世の常にて出でたまふをば、   普段通り酒に酔わない様子で帰りなさる
 4)いと本意なくくちをしきことにおぼしめしたりけり。         もの足りなく残念なこと

12 本文の内容と合致するものを選んで記号で答えなさい。
 ア 道隆は関白になり六年ほどで疫病で亡くなった。
 イ 作者は男が酒を飲むことは面白みのあることだが、たくさん飲むのは難しいといっている。
 ウ 道隆は、済時・朝光と一緒に出かける時、普通の身なりでいるのは残念だと思っていた。
 エ 道隆は、済時・朝光が助けを借りないと牛車に乗れないほどに酔うのを面白く思っていた。
 オ 済時・朝光は、道隆が着物も乱れ、人にかつがれて牛車に乗るのを趣のあることと感じていた。
                           (  )


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