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楽古文
大鏡 雲林院の菩提講(一) 問題
      さいつごろ、雲林院の菩提講に詣でて侍りしかば


 さいつごろ、雲林院の菩提講に詣でてはべりしかば、例の人よりはこよなう年老いうたてげなる翁二人、嫗といき合ひて、同じ所に居ぬめり。
あはれに、同じやうなるもののさまかなと見はべりしに、これらうち笑ひ、見かはして言ふやう、「年ごろ、昔の人に対面して、いかで世の中の
見聞くことをも、聞こえ合はせむ、このただ今の入道殿下の御ありさまをも、申し合はせばやと思ふに、あはれにうれしくも会ひ申したるかな。
今ぞ心やすく黄泉路もまかるべき。おぼしきこと言はぬは、げにぞ腹ふくるる心地しける。かかればこそ、昔の人はもの言はまほしくなれば、
穴を掘りては言ひ入れはべりけめと、おぼえはべり。返す返すうれしく対面したるかな。さても、いくつにかなりたまひぬる。」と言へば、
いま一人の翁、「いくつといふこと、さらにおぼえはべらず。ただし、おのれは、故太政大臣貞信公、蔵人少将と申しし折の小舎人童、
大犬丸ぞかし。ぬしは、その御時の母后の宮の御方の召し使ひ、高名の大宅世継とぞいひはべりしかな。されば、ぬしの御年は、
おのれにはこよなくまさりたまへらむかし。みづからが小童にてありしとき、ぬしは二十五、六ばかりの男にてこそはいませしか。」と言ふめれば、
世継、「しかしか、さはべりしことなり。さても、ぬしの御名はいかにぞや。」と言ふめれば、「太政大臣殿にて元服つかまつりしとき、
『きむじが姓は何ぞ。』と仰せられしかば、『夏山となむ申す。』と申ししを、やがて、繁樹となむつけさせたまへりし。」など言ふに、
いとあさましうなりぬ。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)菩提講          ぼだいこう

 2)翁            おきな
 3)黄泉路          よみじ
 4)蔵人           くろうど
 5)小舎人童         こどねりわらわ

2 『大鏡』の文学的ジャンルを答えなさい。
   歴史物語

3 文中で語り合っている二人の翁について、
 1)それぞれの名を答えなさい。
  年上の翁 = 大宅世継(おほやけのよつぎ)
  年下の翁 = 
夏山繁樹(なつやまのしげき)
 2)翁は何を語り合いたいと思っていたと言っているか。10字以内で二つ抜き出しなさい。
    世の中の見聞くこと ・ 入道殿下の御ありさま

4 下線部の係助詞の結びの語について説明しなさい。
 1)かかればこそ、昔の人はもの言はまほしくなれば、穴を掘りては言ひ入れはべりけめと、おぼえはべり。
        
                      結びの語は「けめ」。過去推量の助動詞「けむ」の已然形
 2)高名の大宅世継といひはべりしかな。            結びの語は「し」。過去の助動詞「き」の連体形

 3)ぬしは二十五、六ばかりの男にてこそはいませしか。        結びの語は「しか」。過去の助動詞「き」の已然形

5 下線部の「ぬ」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。(重複あり)
 1)うたてげなる翁二人、嫗といき合ひて、同じ所に居めり。       (  )
 2)おぼしきこと言はは、げにぞ腹ふくるる心地しける。         (  )
 3)さても、いくつにかなりたまひる。                (  )
 4)「…。」など言ふに、いとあさましうなり。             (  )

  ア 完了の助動詞の終止形    イ 完了の助動詞の連体形の一部    ウ 打消の助動詞の連体形    エ ナ行変格活用動詞の活用語尾


6 下線部の「に」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。
 1)あはれうれしくも会ひ申したるかな。               (  )
 2)ぬしの御年はおのれはこよなくまさりたまへらむかし。         (  )
 3)みづからが小童てありしとき、                 (  )
 4)「繁樹となむつけさせたまへりし。」と言ふ、いとあさましうなりぬ。    (  )

  ア 格助詞    イ 接続助詞    ウ 副詞の一部    エ 断定の助動詞の連用形    オ 完了の助動詞の連用形
  カ ナリ活用形容動詞の連用形の活用語尾

7 下線部を単語に分解して文法的に説明しなさい。
 1)さいつごろ、雲林院の菩提講に詣でてはべりしかば、   詣で/て/はべり/しか/ば
    ダ行下二段活用動詞「詣づ」の連用形+接続助詞「て」+ラ行変格活用動詞「はべり」の連用形+
    過去の助動詞「き」の已然形+接続助詞「ば」

 2)ぬしの御年は、おのれにはこよなくまさりたまへらむかし。  まさり/たまへ/ら/む/かし
    ラ行四段活用動詞「まさる」の連用形+ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形+存続の助動詞「り」の未然形+
    推量の助動詞「む」の終止形+念押しの終助詞「かし」

 3)しかしか、さはべりしことなり             さ/はべり/し/こと/なり
    副詞+ラ行変格活用動詞「はべり」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形+名詞+
    断定の助動詞「なり」の終止形

 4)やがて、繁樹となむつけさせたまへりし。        つけ/させ/たまへ/り/し
    カ行下二段活用動詞「つく」の未然形+尊敬の助動詞「さす」の連用形+
    ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形+完了の助動詞「り」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形


8 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)例の人よりはこよなう年老い、うたてげなる翁二人、                この上なく ・ 異様なさまの
 2)「年ごろ、昔の人に対面して、いかで世の中の見聞くことをも、聞こえ合はせむ、…」    なんとかして
 3)「…その御時の母后の御方の召し使ひ、高名の大宅世継とぞいひはべりしかな。…」   有名な
 4)「…『きむぢが姓は何ぞ。』と仰せられしかば、…」                  おまえ
 5)「…やがて、繁樹となむつけさせたまへりし。」                   そのまま

9 下線部を現代語訳しなさい。
 1)翁二人、嫗といき合ひて、同じ所に居ぬめり。              同じ場所に座り合わせたようだ
 2)このただ今の入道殿下の御ありさまをも、申し合はせばやと思ふに、      互いに申し合いたい
 3)昔の人はもの言はまほしくなれば、穴を掘りては言ひ入れはべりけめと、     ものを言いたくなると ・ 言い入れたのでしょう
 4)さても、いくつにかなりたまひぬる                   お幾つになりなさいましたか
 5)いくつといふこと、さらにおぼえはべらず                      まったく思い出せません
 6)されば、ぬしの御年は、おのれにはこよなくまさりたまへらむかし          ずっと上でいらっしゃるでしょうよ
 7)「…繁樹となむつけさせたまへりし。」など言ふに、いとあさましうなりぬ      たいそう驚きあきれてしまった

10 文中の下線部「かかればこそ」とあるが、「かかれば(こうであるから)」がさす内容を説明しなさい。
   心に思っていることを言わずにいるのは、ほんとうに腹がふくれるようないやな気持ちがするから。

11 「いとあさましうなりぬ」とは、作者のどんな気持ちを表しているか、説明しなさい。
   二人の老人が語り合う話があまりに昔のことなので、どれほど高齢であるのかと驚きあきれる気持ち。


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