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楽古文
大鏡 若き日の道長(三)肝試し2 問題
      「道隆は右衛門の陣より出でよ。道長は承明門より


 「道隆は右衛門の陣より出でよ。道長は承明門より出でよ。」とそれをさへ分かたせたまへば、しかおはしまし合へるに、
中の関白殿、陣まで念じておはしましたるに、宴の松原のほどに、そのものとなき声どもの聞こゆるに、ずちなくて帰りたまふ。
粟田殿は、露台の外まで、わななくわななくおはしたるに、仁寿殿の東面のみぎりのほどに、軒と等しき人のあるやうに見えたまひければ、
ものもおぼえで、「身の候はばこそ、仰せ言も承らめ。」とて、おのおのたち帰り参りたまへれば、御扇をたたきて笑はせたまふに、
入道殿はいと久しく見えさせたまはぬを、いかがとおぼしめすほどにぞ、いとさりげなく、ことにもあらずげにて、参らせたまへる。
 「いかにいかに。」と問はせたまへば、いとのどやかに、御刀に削られたる物を取り具して奉らせたまふに、「こは何ぞ。」と仰せらるれば、
「ただにて帰り参りて侍らむは、証候ふまじきにより、高御座の南面の柱のもとを削りて候ふなり。」と、つれなく申したまふに、
いとあさましくおぼしめさる。こと殿たちの御けしきは、いかにもなほ直らで、この殿のかくて参りたまへるを、帝よりはじめ感じののしられたまへど、
うらやましきにや、またいかなるにか、ものも言はでぞ候ひたまひける。
 なほ疑はしくおぼしめされければ、つとめて、「蔵人して、削りくづをつがはしてみよ。」と仰せ言ありければ、持て行きて押しつけて
見たまひけるに、つゆたがはざりけり。その削り跡は、いとけざやかにて侍めり。末の世にも、見る人は、なほあさましきことにぞ申ししかし。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 「それをさへ分かたせたまへば」の「それ」は何を指しているか。わかりやすく説明しなさい。
  肝試しに出ていく道順


2 中の関白殿、粟田殿、入道殿とは誰のことか。
  中の関白殿= 藤原道隆
  粟田殿  = 藤原道兼
  入道殿  = 藤原道長


3 下線部の「に」の説明として適切なものを選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)そのものともなき声どもの聞こゆる、ずちなくて帰りたまふ。    (  )
 2)仁寿殿の東面のみぎりのほど              (  )
 3)いとのどやか、御刀に削られたる物を取り具して       (  )
 4)ただて帰り参りて侍らむは、証候ふまじきにより        (  )
 5)うらやましきや、またいかなるにか             (  )

  ア 格助詞    イ 接続助詞    ウ 断定の助動詞の連用形    エ 完了の助動詞の連用形
  オ ナリ活用形容動詞の連用形の活用語尾    カ 動詞の活用語尾

4 中の関白殿、粟田殿、入道殿の肝試しの結果はどのようであったか、適切なものを三つ選びなさい。
                               (  ・  ・  )
  ア 中の関白殿は念仏をとなえながら出かけたが、自分の声とは違う声が聞こえて不安になり帰った。
  イ 中の関白殿は怖いのをがまんしながら出かけたが、えたいの知れない声が聞こえてどうしようもなくて帰った。
  ウ 粟田殿は、命がなくなっては天皇のご命令に従うこともできないと思い、帰った。
  エ 粟田殿は、仁寿殿の東側で大きな人に出会い、夢中でその人の言うことに従って帰った。
  オ 入道殿は、命じられた場所に行った証拠として柱の一部を削りとり、平然として帰ってきた。
  カ 入道殿は、中の関白殿と粟田殿の帰りが遅いのを心配したが、自分のことについては何も言わなかった。


5 「うらやましきにや」の後に省略されていると考えられる語句を答えなさい。
   あらむ

6 下線部の係助詞の結びの語を指摘して、文法的に説明しなさい。
 1)身の候はばこそ、仰せ言も承らめ。       め:推量の助動詞「む」の已然形
 2)見る人は、なほあさましきことに申ししかし。    し:過去の助動詞「き」の連体形(「申し」の「し」)

7 下線部の助詞について、文法的な説明と、訳し方についてそれぞれ適切なものを選んで記号で答えなさい。
 1)かく人がちなるだに、けしきおぼゆ。   (  ・  )
 2)「えまからじ。」とのみ申したまひけるを  (  ・  )
 3)それをさへ分かたせたまへば     (  ・  )
 4)ものもおぼえ           (  ・  )
 5)なほ疑はしくおぼしめされけれ    (  ・  )

  文法的な説明: ア 順接の仮定条件を示す接続助詞   イ 順接の確定条件を示す接続助詞   ウ 添加の意を表す副助詞
          エ 限定の意を表す副助詞   オ 軽いものをあげて重いものを類推させる副助詞   カ 逆接の接続助詞

  訳: A …までも  B …ないで   C もし…なら   D …ので   E …ばかり   F …さえ


8 下線部の助動詞の文法的な意味として適切なものを選んで記号で答え、その活用形を答えなさい。(重複あり)
 1)おのおのたち帰りたまへば          (  ・ 已然形 )
 2)入道殿はいと久しく見えさせたまは      (  ・ 連体形 )
 3)いかがとおぼしめすほどにぞ……参らせたまへ。  (  ・ 連体形 )
 4)ただにて帰り参りて侍らは、証候ふまじきにより   (  ・ 連体形 )
 5)ただにて帰り参りて侍らむは、証候ふまじきにより   (  ・ 連体形 )
 6)高御座の南面の柱のもとを削りて候ふなり。    (  ・ 終止形 )
 7)いとあさましくおぼしめさ。           (  ・ 終止形 )
 8)帝よりはじめ感じののしらたまへど       (  ・ 連用形 )

  ア 尊敬   イ 受身   ウ 可能   エ 仮定・婉曲   オ 推量   カ 意志
  キ 完了   ク 打消   ケ 断定   コ 打消推量   サ 打消意志  シ 推定

9 下線部の敬語表現について、敬語の種類と誰に対する敬意を表しているかを答えなさい。2)については、誰からの敬意を表しているかも答えなさい。
 1)おのおのたち帰り参りたまへれば、御扇をたたきて笑はせたまふ
    参り   = 謙譲      誰に= 花山天皇
    たまへ  = 尊敬      誰に= 藤原道隆・藤原道兼
    せ    = 尊敬      誰に= 花山天皇
    たまふ  = 尊敬      誰に= 花山天皇
 2)「ただにて帰り参り侍らむは、証候ふまじきにより…削りて候ふなり。」
    参り   = 謙譲      誰に= 花山天皇
    侍ら   = 丁寧      誰に= 花山天皇
    候ふ   = 丁寧      誰に= 花山天皇    誰から= 藤原道長
 3)この殿のかくて参りたまへるを
    参り   = 謙譲      誰に= 花山天皇
    たまへ  = 尊敬      誰に= 藤原道長
 4)なほ疑はしくおぼしめされければ
    おぼしめさ= 尊敬      誰に= 花山天皇

10 下線部の動作の主体(主語)は誰か、選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)入道殿はいと久しく見えさせたまはぬを、いかがとおぼしめすほどにぞ     (  )
 2)いとさりげなく、ことにもあらずげにて、参らせたまへる。           (  )
 3)「いかにいかに。」と問はせたまへば                  (  )
 4)御刀に削られたる物を取り具して奉らせたまふに             (  )
 5)うらやましきにや、またいかなるにか、ものも言はでぞ候ひたまひける。     (  )
 6)仰せ言ありければ、持て行きて押しつけて見たうびけるに          (  )

  ア 入道殿   イ 道隆と道兼   ウ 道隆と道兼と道長   エ 人々   オ 蔵人   カ 花山天皇


11 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)そのものともなき声どもの聞こゆるに、ずちなくて帰りたまふ。  どうにもしようがなくて
 2)露台の外まで、わななくわななくおはしたるに        ぶるぶるふるえながら
 3)つれなく申したまふに                 平然として
 4)なほ疑はしくおぼしめされければ、つとめて         翌朝
 5)蔵人して、削りくづをつがはしてみよ。」と         蔵人に命じて

12 下線部を現代語訳しなさい。
 1)中の関白殿、陣まで念じておはしましたるに         がまんしていらっしゃったが
 2)身の候はばこそ、仰せ言も承らめ。」とて         命がございましてこそ、ご命令もお受けする(ことができる)だろう
 3)御刀に削られたる物を取り具して奉らせたまふに       取り添えてさしあげなさるので
 4)持て行きて押しつけて見たうびけるに、つゆたがはざりけり。   少しも一致しないことがなかった(ぴったり一致した)
 5)その削り跡は、いとけざやかにて侍めり。          はっきりとしているようです
 6)見る人は、なほあさましきことにぞ申ししかし。        やはり驚きあきれること



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