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楽古文
大鏡 雲林院の菩提講(三) 問題
      世継が言ふやう、「世はいかに興あるものぞや。


 世継が言ふやう、「世はいかに興あるものぞや。さりとも、翁こそ、少々のことは覚えはべらめ。昔さかしき帝の御政のをりは、
『国のうちに年老いたる翁・嫗やある。』と召し尋ねて、いにしへの掟のありさまを問はせたまひてこそ、奏することを聞こしめし合はせて、
世の政は行はせたまひけれ。されば、老いたるは、いとかしこきものにはべり。若き人たち、なあなづりそ。」とて、黒柿の骨九つあるに、
黄なる紙張りたる扇をさし隠して、気色だち笑ふほども、さすがにをかし。
「まめやかに世継が申さむと思ふことは、ことごとかは。ただいまの入道殿下の御ありさまの、世にすぐれておはしますことを、
道俗男女の御前にて申さむと思ふが、いとこと多くなりて、あまたの帝王・后、また大臣・公卿の御うへを続くべきなり。そのなかに、
幸ひ人におはします、この御ありさま申さむと思ふほどに、世の中のことの隠れなく現るべきなり。
つてに承れば法華経一部を説き奉らむとてこそ、まづ余教をば説きたまひけれ。それを名づけて五時教とはいふにこそはあなれ。
しかのごとくに、入道殿の御栄えを申さむと思ふほどに、余教の説かるると言ひつべし。」など言ふも、わざわざしく、ことごとしく聞こゆれど、
いでや、さりとも、何ばかりのことをかと思ふに、いみじうこそ言ひ続けはべりしか。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)翁            おきな

 2)政            まつりごと
 3)掟            おきて
 4)気色だち         けしきだち
 5)法華経          ほけきょう

2 歴史物語『大鏡』の後に「鏡」のつく歴史物語が三作品書かれ、合わせて「四鏡(しきょう)」とよばれた。四作品を成立順に書きなさい。
   大鏡、今鏡、水鏡、増鏡  (大今水増=だいこんみずましと覚えよう)

3 昔のかしこい帝が年老いた人たちを招いたのは何のためか、説明しなさい。
   昔の規律のようすを聞いて参考にし、今の世を治めるため。
  
 
4 下線部の係助詞の結びの語について説明しなさい。
 1)さりとも、翁こそ、少々のことは覚えはべらめ。          結びの語は「め」。推量の助動詞「む」の已然形
 2)国のうちに年老いたる翁・嫗ある。             結びの語は「ある」。ラ行変格活用動詞「あり」の連体形

 3)それを名づけて五時教といふにこそはあなれ。          結びの語は「なれ」。伝聞の助動詞「なり」の已然形
 4)いみじうこそ言ひ続けはべりしか。               結びの語は「しか」。過去の助動詞「き」の已然形

5 下線部を文法的に説明しなさい。
 1)昔さかしき帝の御政のをりは、…世の政は行はたまひけれ       尊敬の助動詞「す」の連用形
 2)あまたの帝王・后、また、大臣・公卿の御上を続くべきなり       断定の助動詞「なり」の終止形
 3)それを名づけて五時教とはいふにこそはなれ。      ラ変動詞「あり」の連体形「ある」の撥音便「あん」の「ん」無表記
 4)余教の説かるると言ひべし。                  強意の助動詞「つ」の終止形

6 下線部の「に」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。
 1)まめやか世継が申さむと思ふことは、ことごとかは。           (  )
 2)道俗男女の御前て申さむと思ふが、いとこと多くなりて、         (  )   「にて」は場所を示す格助詞
 3)それを名づけて五時教とはいふこそはあなれ。             (  )
 4)何ばかりのことをかと思ふ、いみじうこそ言ひ続けはべりしか。        (  )

  ア 格助詞    イ 接続助詞    ウ 格助詞の一部    エ ナリ活用形容動詞の連用形の活用語尾
  オ 断定の助動詞の連用形    カ 完了の助動詞の連用形

7 下線部の敬語表現について、敬語の種類と、誰への敬意を表しているかを答えなさい。
 1)昔さかしき帝の御政のをりは、…いにしへの掟のありさまを問はせたまひてこそ、        尊敬・(さかしき)帝
 2)奏することを聞こし召し合はせて、世の政は行はせたまひけれ。              謙譲・(さかしき)帝
 3)ただ今の入道殿下の御ありさまの、よにすぐれておはしますことを、             尊敬・入道殿下

8 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)奏することを聞こし召し合はせて、                   (帝に)申し上げる
 2)まめやかに世継が申さむと思ふことは、ことごとかは            まじめに ・ ほかのことではない
 3)道俗男女の御前にて申さむと思ふが、いとこと多くなりて          話すべきことがたくさんになって
 4)つてに承れば、法華経一部を説き奉らむとてこそ、             人づてに
 5)「…」など言ふも、わざわざしく、ことごとしく聞こゆれど、           わざとらしく、おおげさに

9 下線部を現代語訳しなさい。
 1)国のうちに年老いたる翁・嫗やある。』と召し尋ねて、            老人・老女はいるか
 2)若き人たち、なあなづりそ                      軽んじないでくれ
 3)黄なる紙張りたる扇をさし隠して、気色だち笑ふほども、           扇をかざして顔を隠して、気どったようすで
 4)ただ今の入道殿下の御ありさまの、よにすぐれておはしますことを、       実に人よりまさっていらっしゃる
 5)いでや、さりとも、何ばかりのことをかと思ふに、                    そうは言っても、どれほどのことを語れようか

10 「まめやかに世継が申さむと思ふこと」とはどのようなことか。文中から抜き出して答えなさい。
   ただ今の入道殿下の御ありさまの、よにすぐれておはしますこと

11 文中で「入道殿下」「幸ひ人」「入道殿」と表されている人物の名を書きなさい。
   藤原道長


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