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楽古文
大鏡 花山天皇の出家(二) 問題
      さて、土御門より東ざまに率ていだしまゐらせたまふに


 さて、土御門より東ざまに率ていだしまゐらせたまふに、清明が家の前を渡らせたまへば、みづからの声にて、
手をおびただしくはたはたと打ちて、「帝おりさせたまふと見ゆる天変ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな。参りて奏せむ。
車に装束とうせよ。」といふ声を聞かせたまひけむ、さりともあはれにおぼしめしけむかし。「かつがつ、式神一人、内裏へ参れ。」と
申しければ、目には見えぬものの、戸を押しあけて、御後ろをや見まゐらせけむ、「ただ今、これより過ぎさせおはしますめり。」と
いらへけるとかや。その家、土御門町口なれば、御道なりけり。
 花山寺におはしまし着きて、御髪下ろさせたまひてのちにぞ、粟田殿は、「まかり出でて、大臣にも、変はらぬ姿、いま一度見え、
かくと案内申して、必ず参りはべらむ。」と申したまひければ、「我をば、はかるなりけり。」とてこそ、泣かせたまひけれ。
あはれに悲しきことなりな。日ごろ、よく御弟子にてさぶらはむと契りて、すかし申したまひけむが恐ろしさよ。
東三条殿は、「もしさることやしたまふ。」とあやふさに、さるべくおとなしき人々、なにがしかがしといふいみじき源氏の武者たちをこそ、
御送りに添へられたりけれ。京のほどは隠れて、堤のわたりよりぞうち出で参りける。
寺などにては、「もしおして人などやなしたてまつる。」とて、一尺ばかりの刀どもを抜きかけてぞ守り申しける。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)土御門          つちみかど

 2)装束           そうぞく
 3)御髪           みぐし
 4)大臣           おとど
 5)案内           あない

2 文中の「清明(安倍清明)」は、天体の変化を観測し、世の動きを占って天皇に奏上するなどの役目を行っていた。この職名は何か。
   陰陽師(おんみょうじ)

3 「帝おりさせたまふと見ゆる天変ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな。参りて奏せむ。…」について、
 1)誰の発言か答えなさい。
    清明(安倍清明)

 2)発言の内容について、何をしようと言っているのか説明しなさい。
    天皇が退位するという天体の変化があったが、退位がもうなされたと思われるので宮中に参上して天皇に申し上げよう。

4 下線部の係助詞の結びの語について説明しなさい。
 1)「われをば、はかるなりけり。」とてこそ泣かせたまひけれ。  結びの語は「けれ」。過去の助動詞「けり」の已然形
 2)「もしさることしたまふ。」とあやふさに、        結びの語は「たまふ」。尊敬の補助動詞「たまふ」の連体形

 3)「もし、おして人などなしたてまつる。」とて、      結びの語は「たてまつる」。謙譲の補助動詞「たてまつる」の連体形

5 下線部の「に」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。
 1)すでなりにけりと見ゆるかな。         (  )
 2)すでになりけりと見ゆるかな。         (  )
 3)あはれかなしきことなりな。          (  )
 4)「もしさることやしたまふ。」とあやふさ     (  )

  ア 格助詞    イ 接続助詞    ウ 副詞の一部    エ ナリ活用形容動詞の連用形の活用語尾
  オ 完了の助動詞の連用形    カ 断定の助動詞の連体形


6 下線部の動作の主体(主語)は誰か。選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)土御門より東ざまに率ていだしまゐらせたまふに、           (  )
 2)清明が家の前を渡らせたまへば、                 (  )
 3)みづからの声にて、手をおびただしくはたはたと打ちて         (  )
 4)「かつがつ、式神一人、内裏に参れ。」と申しければ、         (  )
 5)「ただ今、これより過ぎさせおはしますめり。」といらへけりとかや。      (  )
 6)花山寺におはしまし着きて、御髪下ろさせたまひてのちにぞ、       (  )
 7)京のほどは隠れて、堤のわたりよりぞうち出で参りける。         (  )

  ア 花山天皇    イ 安倍清明    ウ 目には見えぬもの(式神)    エ 粟田殿(藤原道兼)
  オ 東三条殿(藤原兼家)    カ 源氏の武者たち

7 下線部の敬語表現について、敬語の種類と誰に対しての敬意を表しているかを答えなさい。
 1)「帝おりさせたまふと見ゆる天変ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな。参りて奏せむ。…」
    奏せ= 謙譲      誰に= 花山天皇

 2)「…車に装束とうせよ。」といふ声聞かせたまひけむ、さりともあはれにはおぼしめしけむかし。
    せ    = 尊敬   誰に= 花山天皇
    たまひ  = 尊敬   誰に= 花山天皇  (尊敬語を二つ用いた最高敬語の形)
    おぼしめし= 尊敬   誰に= 花山天皇

 3)目には見えぬものの、戸を押しあけて、御後ろをや見まゐらせけむ、
    まゐらせ= 謙譲    誰に= 花山天皇

 4)日ごろ、よく御弟子にてさぶらはむと契りて、すかし申したまひけむが恐ろしさよ。
    さぶらは= 謙譲    誰に= 花山天皇
    申し  = 謙譲    誰に= 花山天皇
    たまひ = 尊敬    誰に= 粟田殿(藤原道兼)

8 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)清明が家の前を渡らせたまへば、                 お通りになると
 2)「まかり出でて、大臣にも、変はらぬ姿、いま一度見え、かくと案内申して、  出家前の姿・事情
 3)「われをばはかるなりけり。」                    だます
 4)さるべきおとなしき人々、なにがしかがしといふいみじき源氏の武者たちをこそ、 年をとって分別のある・だれそれ

9 下線部を現代語訳しなさい。
 1)「帝おりさせたまふと見ゆる天変ありつるが、すでになりにけりと見ゆるかな。…」  もはや成しとげられたと思われることだよ
 2)「…参りて奏せむ。車に装束とうせよ。」といふ声             車にしたくを早くせよ
 3)花山寺におはしまし着きて、御髪下ろさせたまひて後にぞ、         御髪を剃り落して出家なさって
 4)「御弟子にてさぶらはむ。」と契りて、すかし申したまひけむが恐ろしさよ。     約束して、だまし申し上げなさったであろう
 5)寺などにては、「もしおして人などやなしたてまつる。」とて、             無理に誰かが出家させ申し上げるのではないか

10 「さりともあはれにはおぼしめしけむかし」の「さりとも」は「それにしても」という意味だが、具体的にはどういうことか。
   花山天皇が自ら決意した出家とはいってもということ。
  (天変にもあらわれた、後もどりのできないことであるのだなあとしみじみとお思いになっただろうよ)


11 「御髪下ろさせたまひて」と対比して用いられている語句を抜き出しなさい。
   変はらぬ姿

12 作者は粟田殿に対してどのような気持ちを述べているか。15字程度で抜き出しなさい。
   すかし申したまひけむが恐ろしさよ

13 「もしさることやしたまふ」とは、東三条殿が、誰がどうすることを心配しているのか、説明しなさい。
   粟田殿が花山天皇といっしょに出家すること


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