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楽古文
大鏡 菅原道真の左遷(二) 問題
      なきことにより、かく罪せられたまふを、


 「なきことにより、かく罪せられたまふを、かしこくおぼし嘆きて、やがて山崎にて出家せしめたまひて、都遠くなるままに、
あはれに心細くおぼされて、
  君が住む宿の梢を行く行くと隠るるまでもかへり見しはや
また、播磨の国におはしまし着きて、明石の駅といふ所に御宿りせしめたまひて、駅の長のいみじく思へるけしきを御覧じて、
作らしめたまふ詩、いと悲し。
  駅 長 莫 驚 時 変 改
  一 栄 一 落 是 春 秋
  (駅長驚くこと莫かれ時の変改
   一栄一落是れ春秋)
 かくて筑紫におはし着きて、ものをあはれに心細くおぼさるる夕べ、をちかたにところどころ煙立つを御覧じて、
  夕されば野にも山にも立つ煙なげきよりこそ燃えまさりけれ
また、雲の浮きてただよふを御覧じて、
  山別れ飛び行く雲の帰り来る影見るときはなほ頼まれぬ
さりともと、世をおぼしめされけるなるべし。月の明かき夜、
  海ならずたたへる水の底までに清き心は月ぞ照らさむ
これ、いとかしこくあそばしたりしかし。げに月日こそは照らしたまはめとこそはあめれ。」
 まことにおどろおどろしきことはさるものにて、かくやうの歌や詩などをいとなだらかに、ゆゑゆゑしう言ひ続けまねぶに、見聞く人々、
目もあやにあさましくあはれにもまもりゐたり。もののゆゑ知りたる人なども、むげに近く居寄りて外目せず見聞くけしきどもを見て、
いよいよはえて、ものを繰り出だすやうに言ひ続くるほどぞ、まことに希有なるや。繁樹、涙をのごひつつ興じゐたり。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)播磨           はりま

 2)駅            むまや
 3)筑紫           つくし
 4)希有           けう

2 会話部分は誰が誰について語っているのか、答えなさい。
   大宅世継が菅原道真について

3 下線部の助動詞の文法的意味を選んで記号で答え、またその活用形を答えなさい。(重複あり)
 1)なきことにより、かく罪せられたまふを、            (  ・ 連用形 )
 2)やがて山崎にて出家せしめたまひて、            (  ・ 連用形 )
 3)駅の長のいみじく思へけしきを御覧じて、          (  ・ 連体形 )
 4)なげきよりこそ燃えまさりけれ                (  ・ 已然形 )
 5)帰り来る影見るときはなほ頼まぬ             (  ・ 連用形 )
 6)帰り来る影見るときはなほ頼まれ             (  ・ 終止形 )
 7)さりともと、世をおぼしめさけるなるべし。           (  ・ 連用形 )
 8)清き心は月ぞ照らさ                  (  ・ 連体形 ) 「ぞ」の結び
 9)げに月日こそは照らしたまはとこそはあめれ         (  ・ 已然形 ) 「こそ」の結び

  ア 受身    イ 自発    ウ 可能    エ 尊敬    オ 使役    カ 打消
  キ 完了    ク 存続    ケ 意志    コ 推量    サ 過去    シ 詠嘆


4 本文中に用いられた形容動詞について、基本形(終止形)にして示しなさい。
   あはれなり・かくやうなり・なだらかなり・むげなり・希有なり

5 下線部について、空欄を埋めて説明を完成させなさい。
  げに月日こそは照らしたまはめとこそはあめれ
  「あめれ」のもとの形は「あるめれ」。「ある」は( ラ行変格 )活用動詞の( 連体 )形、
  「めれ」は( 推量 )の助動詞の( 已然 )形。
  「あるめれ」が( 撥音便 )となって「あんめれ」となり「ん」が表記されず「あめれ」となったものである。

6 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)かしこくおぼし嘆きて、やがて山崎にて出家せしめたまひて、        たいそう・そのまま
 2)をちかたにところどころ煙立つを御覧じて、               遠方
 3)夕されば野にも山にも立つ煙                    夕方になると
 4)山別れ飛び行く雲の帰り来る見るときはなほ頼まれぬ          姿
 5)ものを繰り出だすやうに言ひ続くるほどぞ、まことに希有なるや。       珍しいことだよ

7 下線部を現代語訳しなさい。
 1)駅の長のいみじく思へるけしきを御覧じて、作らしめたまふ詩、    ひどく悲しく思っているようす
 2)これ、いとかしこくあそばしたりかし              たいそうりっはにお詠みになったことだよ
 3)まことにおどろおどろしきことはさるものにて、           おおげさなことはいうまでもないことで
 4)歌や詩などをいとなだらかに、ゆゑゆゑしう言ひ続けまねぶに、   すらすらと、威厳があるようすで・聞いたまま語る
 5)見聞く人々、目もあやにあさましくあはれにもまもりゐたり       まぶしいほどりっぱだと驚きあきれて・見つめていた

8 「君が住む…」の歌に表れた気持ちはどのようなものか、選んで記号で答えなさい。
                                    (  )
 ア 君の住む家の木立に見送られる気持ちで旅立ち、これから行く先に期待する気持ち。
 イ 都に残る君を思うと恋しく、都を離れるのはつらく、旅立つことを心細く思う気持ち。
 ウ 旅先で泊まった宿から出発していく君が何度も振り返るのを見て、旅の無事を祈る気持ち。
 エ 旅先で泊まった宿から離れるにつれて木立も見えなくなり、旅の順調さを思う気持ち。


9 「駅長莫驚」の詩の、「一栄一落是春秋」とはどういう考え方を表しているか、説明しなさい。
   草木が春に勢いよく栄え、秋には衰えていくのは、自然の移り変わりであり、
  人間が栄え、衰えるのもまた自然のなりゆきであるという考え方。(栄えていた自分が左遷されたこともこの世の定めだという考え方)


10 「夕されば…」の歌について
 1)掛詞を指摘しなさい。
   「なげき」は「嘆き」の「き」に「木」の意味を掛けている。
 2)縁語について、空欄を埋めて説明を完成させなさい。
  「(  )」と「(  )」は「燃え」の縁語

11 「山別れ…」の歌について
 1)「なほ頼まれぬ」を口語訳しなさい。
   やはり自然とあてにしてしまうことだ
 2)どのようなことが「頼まれぬ」というのか、説明しなさい。
   無実の罪が晴れて、再び都に帰れること。

12 「海ならず…」の歌は誰のどのような気持ちを詠んだものか、説明しなさい。
    道真の、自分の潔白な心を天はきっと見通してくれるだろうと思う気持ち。


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