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楽古文
大鏡 時平と道真(一) 問題
      あさましき悪事を申し行ひたまへりし罪により、


 あさましき悪事を申し行ひたまへりし罪により、この大臣の御末はおはせぬなり。さるは、大和魂などは、いみじくおはしましたるものを。
 延喜の、世間の作法したためさせたまひしかど、過差をばえしづめさせたまはざりしに、この殿、制を破りたる御装束の、ことのほかに
めでたきをして、内裏に参りたまひて、殿上にさぶらはせたまふを、帝、小蔀より御覧じて、御けしきいとあしくならせたまひて、
職事を召して、「世間の過差の制厳しきころ、左の大臣の、一の人といひながら、美麗ことのほかにて参れる、便なきことなり。
はやくまかり出づべきよし仰せよ。」と仰せられければ、承る職事は、いかなることにかと恐れ思ひけれど、参りて、わななくわななくしかじかと
申しければ、いみじく驚き、かしこまり承りて、御随身の御先参るも制したまひて、急ぎまかり出でたまへば、御前どもあやしと思ひけり。
 さて、本院の御門一月ばかり鎖させて、御簾の外にも出でたまはず、人などの参るにも、「勘当の重ければ。」とて、
会はせたまはざりしにこそ、世の過差は平らぎたりしか。うちうちによく承りしかば、さてばかりぞしづまらむとて、
帝と御心合はせさせたまへりけるとぞ。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)殿上           てんじょう

 2)小蔀           こじとみ
 3)職事           しきじ
 4)便なし          びんなし
 5)御随身          みずいじん

2 文中の「この大臣」「延喜」はそれぞれ誰のことか。
  この大臣 =  藤原時平
  延喜   =
  醍醐天皇

3 「大和魂」はどのような意味で用いられているか。最も適当なものを選んで、記号で答えなさい。
                                         (  )
 ア 日本人固有の生まれながらに持っている知恵
 イ 実務的な物事を処理する才能・手腕
 ウ 漢学の知識も持ち、伝統的なすぐれた和歌をも作る才能
 エ 日本独特の美意識と気概のある精神


4 下線部の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。
 1)この大臣の御末はおはせぬなり。            (  )
 2)御気色いと悪しくならせたまひて、            (  )
 3)内裏に参りたまひて、殿上にさぶらはたまふを、      (  )
 4)さて、本院の御門一月ばかり鎖さて。          (  )

  ア 断定の助動詞    イ 伝聞の助動詞    ウ 推定の助動詞    エ 四段活用動詞
  オ 形容動詞の活用語尾    カ 動詞の一部    キ 尊敬の助動詞    ク 使役の助動詞


5 下線部の「の」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。
 1)大臣の御末はおはせぬなり。                (  )
 2)延喜、世間の作法したためさせたまひしかど、          (  )
 3)この殿、制を破りたる御装束、ことのほかにめでたきをして、      (  )
 4)美麗ことほかにて参れる、便なきことなり。             (  )

  ア 主語を示す格助詞    イ 連体修飾を示す格助詞    ウ 同格を示す格助詞    エ 形容動詞の一部


6 下線部の敬語表現について、敬語の種類と誰に対する敬意を表しているかを答えなさい。
 1)延喜の、世間の作法したためさせたまひしかど、過差をばえしづめさせたまはざりしに、
    させ = 尊敬      誰に= 醍醐天皇
    たまは= 尊敬      誰に= 醍醐天皇
 2)この殿、…内裏に参りたまひて、殿上にさぶらはせたまふを、
    さぶらは= 謙譲     誰に= 醍醐天皇
    せ   = 尊敬     誰に= 藤原時平
    たまふ = 尊敬     誰に= 藤原時平

7 下線部の動作の主体(主語)は誰か、選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)この殿、制を破りたる御装束の、ことのほかにめでたきをして、            (  )
 2)殿上にさぶらはせたまふを、帝小蔀より御覧じて、御気色いと悪しくならせたまひて、    (  )
 3)「…美麗ことのほかにて参れる、便なきことなり。…」                (  )
 4)参りて、わななくわななく、しかじかと申しければ、                 (  )
 5)いみじく驚きかしこまり承りて、御随身の御先参るも制したまひて、           (  )
 6)うちうちによく承りしかば、さてばかりぞしづまらむとて、                (  )

  ア 醍醐天皇    イ 藤原時平    ウ 語り手(世継)    エ 世間の人々    オ 職事    カ 御随身

8 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)大和魂などはいみじくおはしましたるものを。              すぐれて
 2)内裏に参りたまひて、殿上にさぶらはせたまふを、            お控え申し上げなさる
 3)帝小蔀より御覧じて、御気色いと悪しくならせたまひて、          ご機嫌
 4)美麗ことのほかにて参れる、便なきことなり              不都合なことである
 5)御随身の御先参るも制したまひて、                  お先払いをし申しあげる

9 下線部を現代語訳しなさい。
 1)この大臣の御末はおはせぬなり。               ご子孫はいらっしゃらないのだ
 2)この殿、制を破りたる御装束の、ことのほかにめでたきをして、    禁制を破ったご衣裳で、とりわけりっぱなご衣装
 3)さて、本院の御門一月ばかり鎖させて、            一か月ほど閉じさせて、
 4)人などの参るにも、「勘当の重ければ。」とて、          おとがめが重いので
 5)会はせたまはざりしにこそ、世の過差は平らぎたりしか         世の中の度を越したぜいたくは治まったのだった

10 帝は、時平のどのようなふるまいが不都合なことと言ったのか、説明しなさい。
   度を越したぜいたくが禁じられているのに、格別に華美な衣装で参内したこと。

11 「しかじかと申しければ」の「しかじか」の内容として適切なものを選んで記号で答えなさい。
                                       (  )
 ア 時平がりっぱな衣装を帝に見られて、非常に期限が悪くなったこと。
 イ 帝が時平の華美な衣装をとがめて、はやく退出せよとおっしゃったこと。
 ウ 職事が、帝のお言葉を受けて、おそろしいと思ったこと。


12 「帝と御心合はせさせたまへりけるとぞ」とあるが、帝と心を合わせて、誰が何をしたのか、その結果どうなったのか説明しなさい。
    世の中のぜいたくを抑えるために、時平がわざと華美な衣装で参内し、帝のおとがめを受けたとして
   謹慎して見せた結果、世の中の度を越したぜいたくが治まった。



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