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楽古文
大鏡 時平と道真(二) 問題
      もののをかしさをぞ、え念ぜさせたまはざりける。


 もののをかしさをぞ、え念ぜさせたまはざりける。笑ひたたせたまひぬれば、すこぶることも乱れけるとか。北野と世をまつりごたせたまふ間、
非道なることを仰せられければ、さすがにやむごとなくて、「せちにしたまふことを、いかがは。」とおぼして、「この大臣のしたまふことなれば、
不便なりと見れど、いかがすべからむ。」と嘆きたまひけるを、なにがしの史が、「ことにもはべらず。おのれ、かまへて、かの御ことを
とどめはべらむ。」と申しければ、「いとあるまじきこと。いかにして。」などのたまはせけるを、「ただ御覧ぜよ。」とて、
座につきてこときびしく定めののしりたまふに、この史、文刺に文挟みて、いらなくふるまひて、この大臣に奉るとて、いと高やかに
鳴らしてはべりけるに、大臣、文もえ取らず、手わななきて、やがて笑ひて、「今日は術なし。右の大臣に任せ申す。」とだに
言ひやりたまはざりければ、それにこそ、菅原の大臣、御心のままにまつりごちたまひけれ。
 また、北野の、神にならせたまひて、いと恐ろしく神鳴りひらめき、清涼殿に落ちかかりぬと見えけるが、本院の大臣、太刀を抜きさけて、
「生きても、わが次にこそものしたまひしか。今日、神となりたまへりとも、この世には、われに所置きたまふべし。
いかでかさらではあるべきぞ。」と、にらみやりてのたまひける。いちどはしづまらせたまへりけりとぞ、世の人申しはべりし。
されど、それは、かの大臣のいみじうおはするにはあらず、王威の限りなくおはしますによりて、理非を示させたまへるなり。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 文中で「北野」と呼ばれているのは、誰のことか。また、同じ人物を指している表現を抜き出しなさい。
 北野 =  菅原道真
 同じ人物 =  右の大臣、菅原の大臣


2 文中の下線をつけた「この大臣」「大臣」とは誰のことか。また、同じ人物を指している表現を抜き出しなさい。
 この大臣、大臣 = 藤原時平
 同じ人物 = 
本院の大臣、かの大臣、


3 下線部の「に」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。(重複あり)
 1)「せちしたまふことを、いかがは。」とおぼして、             (  )
 2)「こともはべらず。おのれ、かまへて、かの御ことを…           (  )
 3)座につきてこときびしく定めののしりたまふ              (  )
 4)かの大臣のいみじうおはするはあらず、                (  )

  ア 格助詞    イ 接続助詞    ウ 副詞の一部    エ 断定の助動詞の連用形    オ 完了の助動詞の連用形
  カ ナリ活用形容動詞の連用形の活用語尾

4 下線部の助動詞の文法的な意味として適切なものを選んで記号で答えなさい。また、その活用形を答えなさい。
 1)「この大臣のしたまふことなれば、不便なりと見れど、いかがすべからむ。」  ( 未然形 ) 
 2)「いとあるまじきこと。いかにして。」                  ( 連体形 ) 
 3)「生きても、わが次にこそものしたまひしか。…」            ( 已然形 )
 4)「…今日、神となりたまへとも、この世には、われに所置きたまふべし。…」  ( 終止形 )
 5)王威の限りなくおはしますによりて、理非を示させたまへるなり。       ( 終止形 )


  ア 完了    イ 推量    ウ 伝聞    エ 断定    オ 過去    カ 尊敬
  キ 可能    ク 不可能   ケ 当然    コ 命令


5 下線部の敬語表現について、敬語の種類と誰から誰への敬意を表しているかを答えなさい。
 1)さすがにやむごとなくて、「せちにしたまふことを、いかがは。」とおぼして、
    敬語の種類 = 尊敬     誰から誰へ = 菅原道真から藤原時平へ
 2)なにがしの史が、「ことにもはべらず。おのれ、かまへて、かの御ことをとどめはべらむ。」
    敬語の種類 = 丁寧     誰から誰へ = なにがしの史から菅原道真へ
 3)「今日は術なし。右の大臣に任せ申す。」とだに言ひやりたまはざりければ、
    敬語の種類 = 謙譲     誰から誰へ = 藤原時平から菅原道真(右の大臣)へ

6 下線部の動作の主体(主語)は誰(何)か、選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)北野と世をまつりごたせたまふ間、非道なることを仰せられければ、           (  )
 2)「この大臣のしたまふことなれば、不便なりと見れど、いかがすべからむ。」と嘆きたまひぬるを、 (  )
 3)「いとあるまじきこと。いかにして。」などのたまはせけるを、               (  )
 4)座につきてこときびしく定めののしりたまふに、この史、文刺に文挟みて、         (  )
 5)この大臣に奉るとて、いと高やかに鳴らしてはべりけるに、               (  )
 6)「今日は術なし。右の大臣に任せ申す。」とだに言ひやりたまはざりければ、        (  )
 7)一度はしづまらせたまへりけりとぞ、世の人申しはべりし。               (  )
 8)王威の限りなくおはしますによりて、理非を示させたまへるなり。             (  )

  ア 藤原時平    イ 菅原道真    ウ なにがしの史    エ 世の人    オ 天皇の威光

7 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)せちにしたまふことを、いかがは。」とおぼして、             ぜひに
 2)ことにもはべらず。おのれ、かまへて、かの御ことを…。」         なんでもないことです
 3)この史、文刺に文挟みて、いらなくふるまひて、             おおげさに
 4)「今日は術なし。右の大臣に任せ申す。」とだに言ひやりたまはざりければ、  どうにもしようがない
 5)「王威の限りなくおはしますによりて、理非を示させたまへるなり。       道理にかなうことと、かなわないこと

8 下線部を現代語訳しなさい。
 1)もののをかしさをぞ、え念ぜさせたまはざりける。             我慢なさることができなかった
 2)「この大臣のしたまふことなれば、不便なりと見れど、いかがすべからむ。」   不都合であると思うが、どうしたらよいだろうか
 3)座につきてこときびしく定めののしりたまふに、              政務を厳しく裁定して大声でおっしゃっている
 4)大臣、文もえ取らず、手わななきて、やがて笑ひて、           取ることができず・すぐに
 5)「…われに所置きたまふべし。いかでか、さらではあるべきぞ。」と、    どうしてそうでなくていられるはずがあるか、いや、いられない

9 「ことにもはべらず。おのれ、かまへて、かの御ことをとどめはべらむ。」について
 1)なにがしの史は、時平の道理に合わない裁定をどのような策でとどめようとしたか、説明しなさい。
   時平に文書を差し出す時、おおげさにふるまって、大きな音をたてておならをした。
 2)時平はなにがしの史の行いに対してどのような反応をし、裁定はどうなったか、説明しなさい。
   笑い出して裁定ができなくなり、右大臣である菅原道真にまかせたので、道理に合わない裁定はとどめられた。

10 道真が雷神となって清涼殿に落ちかかったとき、時平が雷神をしずめた理屈はどのようなものであったか説明しなさい。
   道真は生前、左大臣である時平の次の位である右大臣であったので、雷神になったとしても、
  この世においては時平に対して遠慮するべきだというもの。

11 雷神となった道真がしずまった理由について、どのように述べられているか、説明しなさい。
   時平がすぐれていらっしゃったからではなく、天皇の威光により朝廷で定められた官位の順序を乱すのは
  道理に合わないことだという分別を、道真が示されたから。



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