本文へスキップ

楽古文
大鏡 関白は次第のままに 問題
      円融院の御母后、この大臣の妹におはしますぞかし。


 円融院の御母后、この大臣の妹におはしますぞかし。この后、村上の御時、康保元年四月二十九日に失せたまひにしぞかし。
この后のいまだおはしまししときに、この大臣いかがおぼしけむ、「関白は次第のままにせさせたまへ。」と書かせ奉りて、
取りたまひたりける御文を、守りのやうに首にかけて、年ごろ持ちたりけり。御弟の東三条殿は、冷泉院の御時の蔵人頭にて、
この殿よりも先に三位して、中納言にもなりたまひにしに、この殿ははつかに宰相ばかりにておはせしかば、世の中すざまじがりて、
内裏にも常に参りたまはねば、帝も疎くおぼしめしたり。
 そのときに、兄の一条の摂政天禄三年十月に失せたまひぬるに、この御文を内裏に持て参りたまひて、御覧ぜさせむとおぼすほどに、
上、鬼の間におはしますほどなりけり。折よしとおぼしめすに、御舅たちの中に疎くおはします人なれば、うち御覧じて入らせたまひき。
さし寄りて、「奏すべきこと。」と申したまへば、立ち帰らせたまへるに、この文を引き出でて参らせたまへれば、取りて御覧ずれば、
紫の薄様一重ねに、故宮の御手にて、「関白をば、次第のままにせさせたまへ。ゆめゆめ違へさせたまふな。」と書かせたまへる、
御覧するままに、いとあはれげにおぼしめしたる御けしきにて、「故宮の御手よな。」と仰せられ、御文をば取りて入らせたまひにけりとこそは。
さて、かく出でたまへるとこそは、聞こえはべりしか。いと心かしこくおぼしけることにて、さるべき御宿世とは申しながら、円融院孝養の心
深くおはしまして、母宮の御遺言違へじとて、なし奉らせたまへりける、いとあはれなることなり。
 そのとき、頼忠の大臣、右大臣にておはしまししかば、道理のままならば、この大臣のしたまふべきにてありしに、この文にて
かくありけるとこそは、聞こえはべりしか。東三条殿も、この堀河殿よりは上揩ノておはしまししかば、いみじうおぼしめしよりたることぞかし。


問題の答は、反転させると見やすくなります。
1 次の語の本文中での読みを、現代仮名遣いで答えなさい。
 1)大臣           おとど

 2)蔵人頭          くろうどのとう
 3)三位           さんみ
 4)内裏           うち
 5)宿世           すくせ

2 文中、下線を引いた「この大臣」「この殿」「この堀河殿」のうち、ひとつだけ違う人物を指している者がある。
 1)それはどれか。以下の選択肢から記号で答えなさい。
  ア 円融院の御母后、この大臣の妹におはしますぞかし。
  イ この后のいまだおはしまししときに、この大臣いかがおぼしけむ、
  ウ 御弟の東三条殿は、冷泉院の御時の蔵人頭にて、この殿よりも先に三位して、
  エ 中納言にもなりたまひしに、この殿ははつかに宰相ばかりにておはせしかば、
  オ 頼忠の大臣、右大臣にておはしまししかば、道理のままならば、この大臣のしたまふべきにてありしに、
  カ 東三条殿も、この堀河殿よりは上揩ノておはしまししかば、
                                (  )

 2)その人物は誰か、文中の語を抜き出して答えなさい。
    頼忠の大臣

3 「さて、かく出でたまへるとこそは、聞こえはべりしか。」の
  「かく出でたまへる」とは誰がどのようにしてどこから出てきたのかを説明しなさい。
   藤原兼通が円融天皇に関白になることを認めてもらって宮中から出てきた。

4 「この文にてかくありけるとこそは」の「かく」は何をさすか。
   頼忠ではなく兼通が関白に任命されたこと。

5 下線部の助動詞の文法的意味として適切なものを記号で答え、その活用形を答えなさい。(重複あり)
 1)この大臣いかがおぼしけむ                (  ・ 連体形 )
 2)「関白は次第のままにせさせたまへ。」と書か奉りて      (  ・ 連用形 )
 3)この殿よりも先に三位して、中納言にもなりたまひにに     (  ・ 連体形 )
 4)内裏にも常に参りたまはば               (  ・ 已然形 )
 5)「奏すべきこと。」と申したまへば、立ち帰らたまへるに     (  ・ 連用形 )
 6)「故宮の御手よな。」と仰せられ、御文をば取りて       (  ・ 連用形 )
 7)さて、かく出でたまへとこそは               (  ・ 連体形 )
 8)道理のままならば、この大臣のしたまふべきにてありしに     (  ・ 未然形 )
 9)この文にてかくありけるとこそは、聞こえはべりしか。       (  ・ 已然形 )

  ア 断定    イ 完了    ウ 打消    エ 現在推量    オ 過去推量
  カ 可能    キ 受身    ク 過去    ケ 使役    コ 尊敬


6 下線部の「に」の説明として適切なものはどれか。記号で答えなさい。(重複あり)
 1)中納言にもなりたまひしに、この殿ははつかに宰相ばかりにて    (  )
 2)中納言にもなりたまひにしに、この殿ははつか宰相ばかりにて    (  )
 3)御覧ぜさせむとおぼすほど、上、鬼の間におはしますほどなりけり。  (  )
 4)御文をば取りて入らせたまひけりとこそは。           (  )
 5)道理のままならば、この大臣のしたまふべきにてありし、      (  )
 6)この堀河殿よりは上ておはしまししかば、           (  )

  ア 格助詞    イ 順接の接続助詞    ウ 逆接の接続助詞    エ 断定の助動詞の連用形
  オ 完了の助動詞の連用形    カ ナリ形容動詞の連用形の活用語尾

7 下線部の敬語表現について、敬語の種類と誰に対する敬意を表しているかを答えなさい。2)については誰からの敬意かも答えなさい。
 1)内裏にも常に参りたまはねば、帝も疎くおぼしめしたり。
    参り = 謙譲      誰に= 帝(円融天皇)
    たまは= 尊敬      誰に= 藤原兼通
 2)さし寄りて、「奏すべきこと。」と申したまへば、
    奏す = 謙譲      誰に= 円融天皇   誰からの敬意か= 藤原兼通
 3)故宮の御手にて、「関白をば、次第のままに…」と書かせたまへる、
    せ  = 尊敬      誰に= 故宮(中宮安子)
    たまへ= 尊敬      誰に= 故宮(中宮安子)
 4)母宮の御遺言違へじとて、なし奉らせたまへりける、
    奉ら = 謙譲      誰に= 藤原兼通
    せ  = 尊敬      誰に= 円融天皇
    たまへ= 尊敬      誰に= 円融天皇

8 下線部の動作の主体(主語)は誰か、選んで記号で答えなさい。(重複あり)
 1)御弟の東三条殿は、冷泉院の御時の蔵人頭にて、この殿よりも先に三位して、 (  )
 2)兄の一条の摂政、‥失せたまひぬるに、この御文を内裏に持て参りたまひて、  (  )
 3)折よしとおぼしめすに、御舅たちの中に疎くおはします人なれば、        (  )
 4)御舅たちの中に疎くおはします人なれば、うち御覧じて入らせたまひき。     (  )
 5)「奏すべきこと。」と申したまへば、立ち帰らせたまへるに、          (  )
 6)この文を引き出でて参らせたまへれば、取りて御覧ずれば、         (  )
 7)この文を引き出でて参らせたまへれば、取りて御覧ずれば、         (  )
 8)道理のままならば、この大臣のしたまふべきにてありしに、          (  )
 9)東三条殿も、この堀河殿よりは上揩ノておはしまししかば、          (  )
 10)上揩ノておはしまししかば、いみじうおぼしめしよりたることぞかし。       (  )

  ア 中宮安子    イ 冷泉天皇    ウ 藤原兼通    エ 藤原兼家    オ 藤原伊尹
  カ 円融天皇    キ 藤原頼忠    ク 語り手(世継)

9 下線部を単語に分けて文法的に説明しなさい。
 1)「関白は次第のままにせさせたまへ。」   せ/させ/たまへ
   サ行変格活用動詞「す」の未然形+尊敬の助動詞「さす」の連用形+ハ行四段活用動詞「たまふ」の命令形

 2)この文を引き出でて参らせたまへれば、   参らせ/たまへ/れ/ば
   サ行下二段活用動詞「参らす」の連用形+ハ行四段活用動詞「たまふ」の已然形
   +完了の助動詞「り」の已然形+接続助詞

 3)この大臣のしたまふべきにてありしに、    し/たまふ/べき/に/て
   サ行変格活用動詞「す」の連用形+ハ行四段活用動詞「たまふ」の終止形
   +当然の助動詞「べし」の連体形+断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞


10 下線部の語句の文中での意味を答えなさい。
 1)「関白は次第のままにせさせたまへ。」            兄弟の順に
 2)年ごろ持ちたりけり。                   長年の間
 3)この殿ははつかに宰相ばかりにておはせしかば、        わずかに
 4)奏すべきこと。」と申したまへば、              申し上げる
 5)故宮の御手にて、「関白をば、次第のままに…」と書かせたまへる、 ご筆跡
 6)さるべき御宿世とは申しながら、               前世からの因縁

11 下線部を現代語訳しなさい。
 1)この大臣いかがおぼしけむ、                どのようにお思いになったのだろうか
 2)世の中すさまじがりて内裏にも常に参りたまはねば       世の中をつまらないものに思って
 3)帝も疎くおぼしめしたり。                  親しみが持てないとお思いになっていた
 4)この御文を内裏に持て参りたまひて、御覧ぜさせむとおぼすほどに、  御覧に入れようとお思いになる
 5)「関白をば、次第のままにせさせたまへ。ゆめゆめ違へさせたまふな。」 けっしてお間違いなさるな
 6)母宮の御遺言違へじとて、なし奉らせたまへりける、        御遺言にそむくまい

12 「関白は次第のままにせさせたまへ。」という一筆を書いてもらっていた兼通の行為を、語り手はどういうことと述べているか。
  15字以内で二つ抜き出しなさい。
   いと心かしこくおぼしけること   いみじうおぼしめしよりたること

13 本文の内容と一致するものを以下の選択肢から二つ選んで記号で答えなさい。
  ア 藤原兼通は弟の藤原兼家よりも先に中納言になった。
  イ 兼通が亡くなった中宮安子の文書を円融天皇に見せようと宮中に参上した時、天皇は鬼の間にいらっしゃった。
  ウ 鬼の間には天皇と兼通の兄弟たちがいて、兼通はそれまで疎遠にしていたが、かまわず入っていった。
  エ 兼通は一度は帰ろうとしたが、呼びとめられて引き返して天皇に中宮安子の文書を見せた。
  オ 円融天皇は母の遺言にしたがって、本来関白になるはずの人ではなく、兼通を関白に任命した。
  カ 語り手世継は、兼通の思いつきは恐ろしいほどで、兼家も不満であっただろうと述べている。
                             (  ・  )




大鏡 一覧

練習問題
 一覧



ナビゲーション