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楽古文
重要敬語 たまふ



 たまふ
  「与ふ」の尊敬語
  
 尊敬の補助動詞・謙譲
丁寧の補助動詞

   「与ふ」の尊敬語。「お与えになる」意。
   
また命令形「たまへ」が他の動詞の意味を含んで命令する意を表す用法がある。(例文12・13)
   補助動詞としての用法には、尊敬と謙譲(丁寧)の二つの意があるので注意が必要。
   (尊敬の補助動詞「たまふ」は四段活用、謙譲の補助動詞「たまふ」は下二段活用となる。)

   A 動詞   …  ハ行四段活用  … 「与ふ」「授く」の尊敬語 (例文1)
   B 補助動詞 … ア ハ行四段活用  … 尊敬  (例文2・3・4・7・8)
            
イ ハ行下二段活用 … 謙譲(丁寧)(例文5・6・9・10)

   
下二段活用の補助動詞「たまふ」には、命令形はなく、終止形もほとんどない。
   下二段活用の補助動詞「たまふ」は、「思ふおぼゆ見る聞く知る」以外の動詞には続かない、
   会話手紙を含む)にしか用いられない、という特色がある。

   
また、複合動詞に謙譲(丁寧)の補助動詞「たまふ」を用いる場合、「たまふ」は複合動詞の間にはいる。
     思ひ知る → 思ひたまへ知る   思ひ立つ → 思ひたまへ立つ   見知る → 見たまへ知る
   などの形で用いられる。(例文11)


   例1:帝、御衣を脱ぎてたまふ。                (動詞・四段・終止  「与ふ」の尊敬語 
      
(帝はお着物を脱いでお与えになる。)

   例2:これを聞き入れたまはず。                 (補助動詞・四段・未然   → 尊敬 
      
(これをお聞き入れにならない。)

   例3:いと弱くなりたまひけり。                 (補助動詞・四段・連用   → 尊敬 
      
(たいへん弱くおなりになった。)

   例4:右近を起こしたまふ。                   (補助動詞・四段・終止   → 尊敬 
      
(右近をお起こしになる。)

   例5:内々に思ひたまふるさまを奏したまへ。         (補助動詞・下二段・連体  → 謙譲丁寧)) 
      
((私が)内心で思っておりますことを天皇に申しあげてください。)

   例6:東の聞こえいかがと思ひたまふれど、……。       (補助動詞・下二段・已然  → 謙譲丁寧 
      
(関東への評判がどうであろうかと思いますが、……。)

   例7:御堂などに参りたまへることもやと、……。         (補助動詞・四段・已然   → 尊敬 
      (御堂などに参籠なさっていることもあろうかと、……。)

   例8:脱ぎおく衣をかたみと見たまへ。              (補助動詞・四段・命令   → 尊敬 
      (脱ぎ残しておく着物を私の形見と思って見なさいませ。)

   例9:ものの悲しう思うたまへらるるをり、……。       (補助動詞・下二段・未然  → 謙譲丁寧
      (ものごとが悲しく思われます折、……。)

   例10:堪へがたう思ひたまへつるを、……。          (補助動詞・下二段・連用  → 謙譲丁寧
      
(がまんできないと思いましたが、……。)

   例11:
みづからは、えなむ思うたまへたつまじき。       (補助動詞・下二段・連用  → 謙譲丁寧 
      
(自分からは、思い立つことができそうもありません。)

   例12:いざたまへ、出雲拝みに。かいもちひ召させん。 
      
(さあ行きましょう、出雲拝みに。ぼたもちをごちそうしましょう。)
   例13:あなかまたまへ。大臣たちもしばし待て。 
      
(うるさい、おだまりなさい。大臣たちもしばらく待て。)


  補助動詞「たまふ」が、尊敬か、謙譲(丁寧)かを見分けるにはどうするか。
  まずは形(活用形)から判断。
  たまは」「たまひ」「たまふ」は形から四段活用と判断できるので尊敬
    「たまは」(未然形)「たまひ」(連用形)「たまふ」(終止形または連体形)
  たまふる」「たまふれ」は形から下二段活用と判断できるので謙譲の意味を表すとわかる。
    「たまふる」(連体形)「たまふれ」(已然形)

  たまへ」の場合、四段活用の已然形・命令形、または下二段活用の未然形・連用形のいずれかと考えられる。
  下二段活用の「たまふ」は「思ふ・おぼゆ・見る・聞く・知る」につくので、
  それ以外の語についていれば四段活用で尊敬と判断する。

  
「思ふ・おぼゆ・見る・聞く・知る」に続く「たまへ」については、判別が必要となる。
  @ 下に未然形につく助動詞(「ず」・「む」・「じ」・「らる」・「さす」・「しむ」など)が続く
                                  … 未然形の「たまへ」と判断できる
  
                            → 下二段活用なので、謙譲・丁寧の補助動詞
  A 下に連用形につく助動詞(「けり」・「つ」・「たり」など)、接続助詞「て」、用言などが続く
                                  … 連用形の「たまへ」と判断できる
                              → 下二段活用なので、謙譲・丁寧の補助動詞
  B 下に已然形につく助動詞「り」、接続助詞「ども」などが続く。文末で命令形になっている。
    または係助詞「こそ」の結びで已然形となっている。
                              … 已然形・命令形の「たまへ」と判断できる

                                  → 四段活用なので、尊敬の補助動詞
  
なお、「たまへば」の場合は、理論上は「下二段活用の未然形+ば」(謙譲で仮定条件)と

  「四段活用の已然形+ば」(尊敬で確定条件)のどちらかと考えられるが、
  ほとんどは尊敬の「たまへ」である。

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